※本記事はプロモーションを含みます。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への勧誘や投資助言を目的とするものではありません。投資判断はご自身の判断と責任で行ってください。
AI株式投資ツールを作っていると、どうしても「どの買いシグナルが一番当たりやすいのか」が気になります。
私も最初は、投資本で読んだカップウィズハンドルやエリオット波動を条件に落とし込めば、買い候補をある程度整理できるのではないかと考えていました。
ただ、実際にバックテストをしてみると、そこまで単純な話ではありませんでした。
カップウィズハンドルは、条件を厳密にすると候補がほとんど出ません。エリオット波動は候補を増やせましたが、条件を厳しくしても勝率や平均損益が改善するとは限りませんでした。
さらに、同じ買いシグナルを使っていても、資金管理の置き方によって結果が大きく変わります。
この記事は、うまくいった手法を紹介するものではありません。実際に検証してみて、何が分かり、何がまだ分からないのかを残すための記事です。
カップウィズハンドル、エリオット波動、テクニカル指標、資金管理を含めて、AIツールを使いながら株の買いシグナルを検証してきた流れを整理します。
投資本で読んだ3つの手法をAIツールで検証することにした
今回の検証で最初に候補にしたのは、カップウィズハンドル、エリオット波動、テクニカル指標の3つです。
きっかけは投資本でした。本で読むと、どの手法も「なるほど」と思えます。チャートの形、波の数え方、移動平均線や出来高など、買い候補を探す材料として使えそうに見えました。
ただ、本に掲載されている図や説明は、どうしても形の整った例が中心になります。
実際の日本株では、同じ条件にどのくらいの銘柄が当てはまるのか。条件に当てはまった銘柄を買ったと仮定した場合、その後の成績はどうなったのか。
この部分は、自分で検証しなければ分かりません。
そこで、AIを使って判定条件を実装し、バックテストを動かして、結果を表にまとめました。決済理由やポジションサイズを変えた場合の比較にもAIを使っています。
一方で、AIが出した結果をそのまま採用したわけではありません。どの条件を採用候補にするのか。どの数字はまだ信用できないのか。結果の内訳はどうなっているのか。最終的には、自分で確認するようにしました。
開発メモを振り返ると、目的や投資ルール、使い勝手、変更範囲は私が決め、AIにはコード構成、実装、テスト、技術的な原因調査を広く任せていました。AIだけで完成形を決めたのではなく、実際に動かして出た違和感を返しながら直していったツールです。
買いシグナルの基本検証は、2015年1月1日〜2024年12月31日を対象にしています。対象はTOPIX500をベースにした銘柄リストへ、平均日次売買代金とデータ欠損率のフィルターをかけた462銘柄です。初期資金は300万円、最大同時保有は4銘柄を前提にしています。
具体的な売買ルールのしきい値は、この記事では公開しません。細かな条件まで書くと、そのまま再現できる売買ルールになってしまうためです。
ここでは、判定ロジックの細部ではなく、検証から見えた傾向と、途中で私の判断がどのように変わったのかを中心に残します。
カップウィズハンドルは約10年間で1件しか出なかった
最初に試したのは、カップウィズハンドルです。
カップの形状、ハンドル部分、出来高の増加などを条件に落とし込み、AIを使って判定ロジックを実装しました。
しかし、TOPIX500ベースのリストをフィルター後の462銘柄で確認しても、カップウィズハンドルとして記録された決済明細は1件だけでした。この1件は、マイナス12%のストップロスで決済されています。
ただ、取引が1件しかないため、この結果だけで手法の有効性を評価することはできません。
ここで分かったのは、「カップウィズハンドルの成績が悪かった」ということではありません。判断に必要なサンプル数が集まらなかった、ということです。
厳密なパターン判定は、条件だけを見ると整っているように見えます。ただ、条件を厳しくしすぎると、検証に必要な候補そのものが出なくなることがあります。
形のきれいなチャートだけを探すほど、実際に売買候補として残る銘柄は少なくなります。
この時点では、カップウィズハンドルが使えないと判断したわけではありません。現在の条件と対象期間では、評価できるだけの件数が得られなかったという位置づけです。
カップウィズハンドルの詳しい検証は、カップウィズハンドルを10年間検証した記事にまとめています。
エリオット波動は候補を増やせたが、条件を厳しくしても成績は改善しなかった
カップウィズハンドルだけでは候補がほとんど出なかったため、追加したのがエリオット波動です。
2波終了後の3波狙いと、4波終了後の5波狙いという考え方を使い、買い候補を拾う範囲を広げました。
エリオット波動では、カップウィズハンドルよりも候補数を増やせました。
ただし、条件を厳しくすれば、単純に成績が良くなるわけではありませんでした。
ABC修正波を使い、B波高値を終値で上抜ける条件へ変更したところ、勝率と平均損益は下がり、最大ドローダウンだけが改善する結果になりました。
この比較では、変更対象をエリオットWave2とWave4の反発確認に絞り、カップウィズハンドル、市場フィルター、エグジット、ポジションサイズを同時に変えない方針でした。
ただし、変更後の結果にはエリオット波動以外に分類される決済明細も増えています。そのため、変更後の全体成績をB波条件だけの効果として切り分けることはできません。
条件を厳しくしたことで、損失の振れ幅を抱えられる可能性は見えました。一方で、利益も小さくなっています。
この結果だけを見て、変更後の条件が変更前より優れているとは言えません。
勝率、平均損益、最大ドローダウンのどれを重視するかによって、評価も変わります。最大ドローダウンが改善したからといって、ほかの指標が悪化している条件をすぐに採用することはできませんでした。
エリオット波動の変更前後の比較については、エリオット波動を日本株の買いシグナルとして検証した記事に分けています。
資金管理を変えたらバックテストの結果も大きく変わった
買いシグナルの検証を進める中で、もう一つ大きく影響したのが資金管理でした。
最初は、1回の取引で許容する損失額(資金の2%)と損切り幅(マイナス12%)から、1ポジションに使う金額を決めていました。月間の損益がマイナス10%に達した場合は、その月の新規エントリーを停止するというルールも設けています。
元本は300万円で、同時保有は3〜4銘柄、現金を30〜40%残す前提です。
その後、資金管理の条件を変えた別のバックテストとして、固定リスク1%、3%、4%を比較すると、結果の見え方がかなり変わりました。
ここで使っているQC期間は、検証メモ上の確認用期間です。Full期間は、全体を確認するために使った期間です。
ここでの資金管理比較は、上の買いシグナル検証とは別に後から行った集計です。QC期間は2019〜2021年、Full期間は2015〜2025年として集計しています。ただし、QC期間を厳密な外部検証期間として扱っているわけではありません。ここでは、資金管理の条件を比較するための期間区分として見ています。
| 資金管理条件 | 主な結果 | 私の見方 |
|---|---|---|
| 固定リスク1% | 元の計算と比べて、QC期間の利益は約97.2万円から約48.3万円へ、Full期間の利益は約328.7万円から約143.2万円へ低下 | リスクは抱えやすいものの、リターンもかなり小さくなった |
| 固定リスク3% | Full期間の利益は約512.4万円、最終資産は約812.4万円、最大ドローダウンは約マイナス28.1% | 比較した条件の中では、リターンとドローダウンのバランスが良く見える採用候補 |
| 固定リスク4% | Full期間の利益は約472.9万円、最大ドローダウンは約マイナス32.1% | 3%より利益が下がり、最大ドローダウンも悪化した |
固定リスク3%のFull期間における利益約512.4万円、最終資産約812.4万円、最大ドローダウン約マイナス28.1%は、あくまで過去データを使ったバックテスト上の結果です。
将来の運用で同じ結果になることを保証するものではありません。バックテストでは翌営業日始値でのエントリーと0.1%のスリッパージを置いています。一方、手数料、税金、配当、実際の売買単位などの前提によっても、結果は変わる可能性があります。
現時点では、固定リスク3%を、リターンとドローダウンのバランスが比較的良く見える採用候補としています。
ただし、「3%が最適」と判断したわけではありません。
検証条件や対象期間が変われば、結果も変わる可能性があります。最大ドローダウンが約3割あることを考えると、数字だけを見て簡単に採用できる条件でもありません。
ここで感じたのは、買いシグナルの良し悪しだけを見ても足りないということです。
同じシグナルでも、1回の取引でどの程度のリスクを取るかによって、利益、最終資産、最大ドローダウンが変わります。
AIにはシグナルを判定させるだけではなく、資金管理の前提を変えた場合の比較表も作ってもらう必要があると感じました。
買い候補を出すだけのツールではなく、前提を変えたときにリスクがどのように変わるのかを見えるようにするツールとして使う方が、私の判断には合っています。
2つのシグナルを組み合わせても効果を評価できなかった
カップウィズハンドルとエリオット波動をそれぞれ試したあと、最初は2つを組み合わせれば、より判断しやすい買いシグナルになるのではないかと考えました。
ただ、実際の検証結果を見ると、組み合わせの効果を評価するのはかなり難しいことが分かりました。
理由の一つは、サンプル数の偏りです。
比較に使っていた決済ログ227件の内訳は、エリオットWave2が214件、Wave4が12件、カップウィズハンドルが1件でした。
こうして227件には、半分利確後の残りポジションなど、同じエントリーから分かれた決済も別明細として含まれています。
この227件を、カップウィズハンドルのバックテスト成績として扱うことはできません。決済明細の大半をエリオット波動が占めているため、実質的にはエリオット波動を中心とした結果として見る必要があります。
もう一つの理由は、最大同時保有4銘柄という制約です。
どちらか一方の条件に当てはまれば候補にするOR条件でシグナルを組み合わせると、発生件数の多いエリオット波動が、ポジション枠の大半を占めます。
その結果、カップウィズハンドルの候補が出ていても、すでに保有枠が埋まっていれば採用されない可能性があります。
当時のログには、同じ日に複数のWave2候補と、カップウィズハンドル候補が出た例が残っています。ただし、どの銘柄がポジション枠の関係で見送られたのかを特定できる記録までは残っていません。
そのため、特定の銘柄を挙げて「この機会を逃した」と書くことはできません。
ここで言えるのは、シグナルの発生数が極端に偽っている状態では、組み合わせたあとの成績だけを見ても、どちらのシグナルが結果に影響したのか判断しづらいということです。
複数のシグナルを入れれば検証が充実するように見えますが、件数の多いシグナルに結果が引っ張られてしまうことがあります。
2つのシグナルは自動的に統合しないことにした
この検証を踏まえて、現在はカップウィズハンドルとエリオット波動を、1つの自動売買シグナルには統合しない方針にしています。
どちらか一方が出たら候補、両方が出たら強い候補という形にしたくなる気持ちはあります。画面上でも分かりやすく、ツールとしても完成しているように見えます。
ただ、現時点のデータでは、シグナルの強さをそのように分類できるだけの材料がありません。
カップウィズハンドルは、サンプルが1件しかありません。エリオット波動についても、市場平均との比較条件を含めて、安定した優位性を確認できた段階ではありません。
そのため現在は、2つのシグナルを独立した参考情報として表示し、候補として採用するかどうかは自分で確認する形にしています。
AIツールには、条件に当てはまる候補を見つけること、候補になった理由を整理すること、バックテスト結果を表にすることを任せます。
ただし、実際に買うかどうかは、AIが出したシグナルだけでは決めません。
実際の開発でも、スキャン対象の拡大、結果保存、チャート表示、候補管理画面などは、使ってみて必要性を確認しながら足していきました。AIは実装を進められますが、何が読みにくいか、どこで判断しづらいかは、使う側の確認が残ります。
この方針は少し地味です。自動的に「強いシグナル」を出すツールの方が見栃えはします。
それでも今の検証段階では、分からないものを分かったことにしない方が大事だと感じています。
今の段階では有効な売買戦略とは断定できない
現時点では、カップウィズハンドルもエリオット波動も、「有効な売買戦略」と断定できる段階ではありません。
カップウィズハンドルは、条件を厳密に実装できたものの、約10年間で該当取引が1件しかありませんでした。これでは有効性を評価できません。
エリオット波動は候補数を増やせましたが、条件変更によって勝率や平均損益が改善したわけではありません。最大ドローダウンの改善は見えましたが、それだけを理由に、変更後の条件を採用するとは言い切れません。
資金管理については、固定リスク3%を現状の採用候補としています。ただし、これも過去データを使ったバックテスト上の結果です。実際の資金運用で同じように機能するとは限りません。
次にやることは、新しい買いシグナルを無理に増やすことではないと考えています。現在の条件を、実実際の運用の中で確認していくことです。
AIツールで候補を出し、条件に合う銘柄が出たときに、なぜ候補になったのかを確認する。設定したポジションサイズを守れるかを見る。バックテストだけでは見えにくい心理的な負荷を含めて、運用しながら記録していきます。
保有期間が長くなりすぎる問題に対して、出口条件を短くする実装とテスト通過までは確認しています。ただし、変更前後のバックテスト比較はまだ終らっていないため、この記事では改善効果としては扱いません。
次に試す仮説は、まだ決まっていません。
今は買いシグナルを増やすよりも、サンプル数、資金管理、最大ドローダウン、実際の判断のしやすさを、同じ検証ログの中で見続ける段階です。
AIに答えを決めてもらうのではなく、比較できる材料を増やしてもらい、どこまで信用できるのかを私が確認する。今のところ、その使い方が一番合っていると感じています。

