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※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への勧誘や投資助言を目的とするものではありません。投資判断はご自身の判断と責任で行ってください。
カップウィズハンドルの短期ルックバックは、単独検証でかなり強い結果でした。EW2も単独ではプラスでした。そうなると、次に考えたくなるのは「両方を使えばもっと良くなるのでは」ということです。
私も最初はそう思っていました。カップウィズハンドルは順張り寄り、EW2は逆張り寄りです。違う局面を拾えるなら、組み合わせることでチャンスが増えるように見えます。
でも、バックテスト結果は逆でした。今回の条件では、Cup単独が最も強く、EW2を足すとリターンも最大ドローダウンも悪化しました。この記事では、その原因をポジション枠の競合から整理します。
足せば強くなると思った組み合わせがCup単独を下回った
最終比較では、Cup lookback_short単独、EW2単独、Cup+EW2組み合わせを同じFull期間で並べました。前提は2015年から2024年、初期資本300万円、最大同時ポジション4、最大保有日数60日、fixed_risk_pct=0.03 です。
ここでは、買い判定ロジックの具体的なパラメータ値ではなく、同じ前提で比較した結果を出します。Cup単独の+455%、+1,365万円という数字は強く見えますが、過去データ上のバックテスト結果であり、将来の利益を保証するものではありません。
結果は、かなりはっきりしていました。Cup単独は増加額+1,365万円、年率+18.7%、MDD-20.68%。EW2単独は+269万円。組み合わせは+718万円でした。組み合わせはEW2単独よりは良いものの、Cup単独には大きく負けています。
| 指標 | Cup単独 | EW2単独 | Cup+EW2 |
|---|---|---|---|
| 取引数 | 166件 | 214件 | 230件 |
| PF | 2.377 | 1.254 | 1.527 |
| 勝率 | 60.2% | 49.5% | 51.7% |
| 総リターン | +455% | +89.76% | +239% |
| 増加額 | +1,365万円 | +269万円 | +718万円 |
| MDD | -20.68% | -23.07% | -34.48% |
組み合わせで一番気になったのは、リターンが下がっただけでなく、最大ドローダウンが-34.48%まで悪化したことです。強い買い判定を足したはずなのに、全体のリスクはむしろ大きくなりました。
ここで大事なのは、EW2が完全に悪いという話ではないことです。EW2単独はプラスでした。問題は、Cupと同じ資金枠で使ったときに、Cupの良い取引を邪魔してしまったことです。
max_positions=4の枠をEW2が使い、良いCupを逃した
今回のツールでは、最大同時ポジション数を4にしています。つまり、どれだけ多くの買いシグナルが出ても、同時に持てるのは4銘柄までです。この制約があると、買い判定は単独の強さだけでなく、枠をいつ使うかが重要になります。
EW2は逆張り寄りなので、相場が下げている局面でポジションを持ちやすくなります。一方、Cupは上昇の形を確認してから入る順張り寄りです。EW2が先に4枠を使っていると、後から出た良いCupシグナルに入れないことがあります。
実行取引数の差分で見ると、Cup単独では166件取れていたのに、組み合わせ内のCup取引は87件まで減りました。約48%のCup取引が消えたことになります。
| 指標 | Cup単独 | 組み合わせ内のCup | 変化 |
|---|---|---|---|
| 取引数 | 166件 | 87件 | -79件 |
| 勝率 | 60.2% | 49.4% | -10.8pt |
| 損益合計 | +1,365万円 | +152万円 | -1,213万円 |
さらに候補単位で詳しく見ると、EW2に枠を使われたことで逃したCup候補は96件あり、逸失損益の合計は+721万円でした。実行取引数の差分で見る79件と、候補単位で見る96件は定義が違います。記事では混同しないように、前者は「実行されたCup取引の減少」、後者は「枠競合で逃した候補」として扱います。
良いシグナルを足したつもりでも、資金枠が有限なら、別の良いシグナルを押し出すことがあります。これが、今回いちばん大きな発見でした。
組み合わせ内のCupは勝率も損益も大きく劣化した
もう一つ気になったのは、組み合わせでも取れたCupの質です。単に取引数が減っただけなら、まだ説明は簡単です。ところが、組み合わせ内で実行されたCup取引は、勝率も損益も大きく落ちていました。
Cup単独では勝率60.2%、損益合計+1,365万円でした。組み合わせ内のCupだけを見ると、勝率49.4%、損益合計+152万円です。つまり、Cupの良い部分がかなり失われています。
この理由として考えたのが、相場環境のズレです。EW2が下落局面で枠を使っている間、良いCupシグナルが出ても入れません。EW2のポジションが損切りされたあとに残った枠で入れるCupは、すでに相場環境が悪い時期のシグナルになっている可能性があります。
私はこれを、良いCupを逃したあとの「残りシグナル問題」として見ています。表面上は同じCup判定でも、どのタイミングで枠が空いたかによって、取れる取引の質が変わります。
| 逃したCup候補の例 | 日付 | 逸失損益 | 損益率 | 手仕舞い理由 |
|---|---|---|---|---|
| 4506.T | 2024-08-02 | +126万円 | +31.8% | 保有期限到達 |
| 6770.T | 2024-04-23 | +79万円 | +19.2% | 保有期限到達 |
| 9506.T | 2023-05-02 | +73万円 | +25.5% | 保有期限到達 |
| 8306.T | 2022-11-25 | +71万円 | +28.8% | 保有期限到達 |
| 8795.T | 2022-12-01 | +69万円 | +27.9% | 保有期限到達 |
この表は、個別銘柄をすすめるためのものではありません。見たいのは、どんな取引を逃したのかです。逃した候補の中には、Cup単独なら大きく伸びていたものが含まれていました。組み合わせることで、そうした取引を取りにくくしていた可能性があります。
2020年のドローダウンで逆張り同時保有の怖さが見えた
組み合わせの最大ドローダウンは、2020年4月3日に-34.48%まで悪化しました。コロナショック後の急落期に、4枠すべてをEW2が占有していました。EW2の性格上、下落後の押し目を拾いに行くため、この動き自体はロジックとして自然です。
ただ、複数の逆張りポジションが同じタイミングで崩れると、ドローダウンは一気に深くなります。2020年3月下旬に入ったEW2ポジションの一部は、4月3日に同時にトレーリングストップで手仕舞いされています。
| 銘柄 | シグナル | エントリー | 手仕舞い | 損益 | 理由 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2282.T | EW2 | 2020-03-26 | 2020-04-03 | -12.6万円 | trailing_stop |
| 9404.T | EW2 | 2020-03-26 | 2020-04-03 | -12.6万円 | trailing_stop |
| 9048.T | EW2 | 2020-03-23 | 2020-05-22 | +5.7万円 | max_holding |
| 9468.T | EW2 | 2020-03-30 | 2020-05-29 | +35.4万円 | max_holding |
逆張りロジックを複数同時に持つと、相場がさらに崩れたときの損失タイミングが重なりやすくなります。この重なりが、Cup単独では-20.68%だったMDDを、組み合わせでは-34.48%まで悪化させた背景にあります。
もちろん、EW2のすべてが悪いわけではありません。上の表でも、後からプラスで終わったEW2ポジションがあります。ただ、ドローダウンを見るときは、最終損益だけではなく、途中でどれだけ資産が沈むかも重要です。実際に運用するなら、この下落幅に耐えられるかを考えなければいけません。
採用したのはCup lookback_short単独という地味な結論だった
最終的に、本番採用候補として残したのはCup lookback_short単独です。本文では具体的な買い判定パラメータ値までは出しませんが、方向性としてはカップウィズハンドルの短期ルックバックと、エクスポージャー最適化後の資金配分を組み合わせた設定です。EW2は組み合わせ時にCupの質を落としたため、現時点では無効化する判断にしました。
これは派手な結論ではありません。強いロジックを足して、さらに強い戦略を作るという話ではなく、むしろ「足さない方が良かった」という話です。でも、今回の検証ではそこが一番大事でした。
システムトレードの買い判定は、単独成績だけでなく、同じ資金枠の中で他のロジックを邪魔しないかまで見ないと判断できません。今回のCupとEW2の組み合わせは、そのことをかなり分かりやすく見せてくれました。
AIに検証を任せてよかったのは、こういう直感と違う結果を数字で止めてもらえるところです。人間の感覚だけなら、EW2も残しておきたくなったと思います。チャンスが増えそうに見えるからです。
でも、実際にはチャンスが増えたのではなく、良いCupを逃し、残ったCupの勝率を落とし、MDDを深くしていました。次に改善するなら、EW2を完全に捨てるかどうかではなく、Cupと同じ枠で競合させない設計を考える必要があります。たとえば、別ポートフォリオに分ける、相場環境で切り替える、EW2専用の枠を小さくするなどです。
今回の結論は、Cup lookback_short単独を採用することです。ただし、将来の利益を約束するものではありません。過去データ上で最も納得しやすかった候補を選び、これからも前提を固定しながら検証を続ける、という位置づけです。
